運動がメンタルに与えるメカニズム
運動の後に、気分がすっきりした、前向きな気持ちになったという経験はないでしょうか。運動とメンタルヘルスの関係性について解説したいと思います。
運動をすることによって、様々なよい影響が現れます。運動をすることによって、交感神経がプラスに作用する時間が長くなり、ポジティブになりやすいということが分かっています。運動によって、ストレスを解消させるためのホルモンが分泌されます。そのホルモンが、心を安定化させる働きをもつ「セロトニン」や「エンドルフィン」という物質です。
セロトニンは精神の安定や安心感、頭の回転をよくして直観力を上げるなど、脳を活発に働かせる脳内物質です。これらの効能から、「幸せホルモン」とも言われます。特に、ストレスに対して効能があり、体内で自然に生成されるもので、精神安定剤とよく似た構造をしています。
エンドルフィンは、免疫力向上やリラックス効果など、気分を良くするホルモンです。その分泌量が減ると、代わりに、ノルアドレナリンという興奮ホルモンの分泌量が増加し、常に不安や興奮を感じるようになります。
運動はストレスを解消するだけではなく、ストレスに強い心身をつくる意味でも効果的であり、日常的に運動をすることで、セロトニンやエンドルフィンが安定的に身体に供給され、ストレスや疲労解消に効果を発揮します。そして、運動をすると、当然疲労します。その疲労感こそが、安眠でき、睡眠の質を高めるのです。すなわち、適度な運動をすることで、安眠でき、疲労回復やストレス解消効果が得られます。
布団に入ってから考え事をしていると、寝つきが悪くなり、睡眠中も脳が働き続けてしまうことがあります。そのため、眠りが浅かったり、寝覚めが悪く、起床時にスッキリしない経験をしたことがあるのではないでしょうか。運動不足が不眠症につながる一つの要因になることもあります。運動には、前述した通り、ホルモンの分泌によって、健康維持や健康を増進させる働きがあるので、適度な運動は大切です。
- プラスの心理的効果を与える運動とは?
◆リズムがある運動を心がける
上記のホルモン物質は、反復するリズム運動で放出されやすいことが分かっています。反復動作を含むリズム運動とは具体的には、ジョギングやウォーキングです。外の景色も楽しみながら、高いリフレッシュ効果があります。
◆定期的に運動をする
ストレスホルモンの「コルチゾール」は、定期的に運動することで、分泌されにくくなります。気まぐれで運動するよりも、毎日ジョギングをするなど、定期的に運動することがさらに良いとされています。普段の生活の中に、無理をしない程度の運動を取り入れ、習慣化するのがよいかもしれません。
これまで、運動の心理的効果をみてきました。定期的に無理のない運動をすることで、①ストレス解消 ②ストレス耐性を高める
③睡眠の質が向上などのメリットがあると解説をしてきました。これらは、仕事で生産性を上げ、成果を出すためにも、非常に重要なことで、運動が心理的にプラスの効果があるのはもちろん、仕事にもプラスの影響があることが、イメージできたのではないでしょうか。
次に私たちビジネスパーソンにとっての運動や身体を鍛えることのメリットについて、みていきたいと思います。
海外のビジネスパーソンの中でも、特にエリートと呼ばれる方は男女を問わず、ジョギングをしたり、ジムに通ったりと、仕事と運動を両立しているイメージは多くの人が想像できるのではないでしょうか。私の身近なところでも、外資系勤務の上司がかなり体形的にいわゆる肥満型だったのですが、彼が独立して、コンサル会社を立ち上げるにあたり、本当に別人のように、引き締まった体形に生まれ変わり、スーツを着こなしている姿をテレビで見て、非常に驚きました。聞いた話によると、退職してすぐに、パーソナルトレーナーをつけ、30kg近く、ウェイトを落としたとのことです。コンサル会社の社長として、社員やその家族の生活を預かる立場のため、今のままの体形では絶対ダメだと思い、猛烈にトレーニングをされたようです。
このようなことから、ビジネスパーソンが身体を鍛えるために運動するのは、健康の増進といった、目的だけではなく、様々な効能があることを理解して、トレーニングしているのです。ビジネスパーソンが身体を鍛えることのメリットや仕事における効能をみてみましょう。
1.精神が安定する
仕事が忙しくなったり、人間関係などで、ストレスがたまったりするとメンタルヘルスに影響がでます。メンタルヘルスが不調になると、自己肯定感が低下し、普段の成果を出すことができなくなります。運動をすることで、心を落ちつかせる脳内物質である「セロトニン」が分泌され、精神が安定し、落ち着いた気持ちになれます。外部環境変化が激しい現在、様々な決断が求められるビジネスパーソンにとって、安定した精神は、正確で迅速な判断力と決断力を下すために、必要不可欠な要素となります。
2.ストレス耐性が上がる
運動を行い、体を鍛えることで、精神面も安定します。その理由は、筋トレや運動をすることによって、脳内物質である「エンドルフィン」というホルモンが分泌されるからです。ランナーズハイという言葉はみなさんも一度は耳にしたことがあるでしょう。私たちが身体を動かし続けるとき、ストレス軽減のためにエンドルフィンが分泌され、このホルモンが働くことにより、運動中に高揚感や満足感が高まったり、神経を落ち着かせる作用が発揮されます。ビジネスにおいて、ストレスがかかる局面は多々発生します。日々のトレーニングによって、不安を抑える効果のあるエンドルフィンを介してストレス耐性を上げていけるので、安定して、仕事で成果を出すことができるのです。
3.太りにくい体質になる
身体を鍛えて筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり、太りにくい体質になります。基礎代謝とは呼吸、心拍、体温維持といった体内で生命維持のために必要な消費エネルギーのことです。この数値が上がることで太りにくい身体になることはもちろん、身体の免疫力も上がり、病気に強い体質になります。
4.疲れにくい身体になる
ビジネスパーソンにとって身体は資本です。疲れている状態では、最高のパフォーマンスは発揮できません。運動を行うと心地よい疲労感により、夜もぐっすりと眠れます。さらに、疲労回復効果のある脳内物質「成長ホルモン」が分泌されますので、すっきりとした状態で、仕事に向かうことができます。
5.セルフコントロール力が身に付く
運動や筋トレを行うことでセルフコントロール力が身に付き、仕事にも好影響をもたらします。例えば、セールスマンが営業数字を達成する内に自信がつくのと同じで、運動や筋トレをして体型が変わると、自信もついてきます。鍛え抜かれた身体を手に入れるには、一朝一夕にはいきません。計画を立て、あらゆる誘惑に負けず、自己を律して目標を達成していくプロセスは、ビジネスにおける目標達成プロセスと同じだといえます。努力をして手に入れた鍛えられた身体は、大きな自信とセルフコントロール力をもたらしてくれます。
6.見た目が良くなる
「メラビアンの法則」では、人は第一印象の55%が視覚情報、つまり見た目で判断されると言われています。鍛えている人を見ると、人は無条件に尊敬するもの。鍛えている体はスーツの上からでも分かりますし、見た目も変化して、同僚やクライアントからの印象も変わります。健康的で引き締まった身体は、若々しく、健康管理ができている好印象を相手に与え、自信につながります。
7.いざという時に全力を出せる
特に、筋トレを行うと、ドーパミンも分泌されます。ドーパミンには脳を覚醒させる効果があり、いわゆる「本気の状態」に移行していきます。トレーニングを行っていると、常に全力を「出し切る感覚」が身につきます。この出し切る感覚を掴んでおくと、ビジネスや私生活でも、いざという時に100%の力を出せる瞬発力がついてきます。
- まとめ
これまでのお話の通り、運動や筋トレのメリットは種々あります。身体に極端に負担をかけない、運動や筋トレという前提であれば、デメリットが見当たらないともいえるぐらい、トレーニングの効果が大きいことが理解できたのではないでしょうか。前半は運動が心理的に与える影響、後半は特にビジネスパーソンにとっての効能について、解説をしてきました。ビジネスパーソンにとって、トレーニングは非常に費用対効果が高い自己投資といえます。高い成果を上げているエリートビジネスマンや経営者が、自己を厳しく律して、身体を鍛える理由は、効能が大きく、費用対効果も高いからです。また、経営者は孤独であるとよく言われますが、身体を鍛える筋トレはひとりで目標に向かって、自己を律して行うもので、まさに、その姿は普段の経営者の仕事と重なる部分もあるようにも思います。
運動や筋トレの効果があることはわかったものの、運動が苦手な方もいらっしゃると思います。確かに、運動の苦手な方がジムに行って、筋トレするのはハードルが高いですが、身近なところで、ウォーキングやジョギングでも、様々な効果があることはお話の通りです。将来への自己投資と健康増進のために、軽い運動からはじめてはいかがでしょうか。
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